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京都・東山|町家改修・路地再生|あじき路地 北5

京都市東山区の町家改修「あじき路地 北5」
京都市東山区の町家改修「あじき路地 北5」

 京都市東山区、柿町通から一本入った「あじき路地」に建つ長屋の一室を改修した計画である。
あじき路地は、細い路地を挟んで木造長屋が連なり、現在も若い作家たちが制作と生活を共にする、職住一体の暮らしが続いている場所である。それぞれの住人が住居の一部をミセやアトリエとして使い、制作すること、商うこと、暮らすことが路地を介して緩やかにつながっている。
この路地では、建築だけでなく、そこに住む人々の振る舞いや営みそのものが、時間とともに場所の風景をつくってきた。

本計画は、入居者の退去を契機に、老朽化した長屋をこれからも使い続けていくための改修として始まった。築約130年の建物には、建設当初の架構だけでなく、これまで暮らしてきた人々によって加えられ修繕され使い続けられてきたさまざまな痕跡が残されていた。
そこで、建物をある時代の姿へ戻すことや、すべてを新しくつくり直すことではなく、それぞれの時代に加えられてきたものを読み取り、残せるものを次の暮らしへ引き継ぐことを改修の方針とした。

既存の外観は路地の風景を継承するため大きく変更せず、室内についても既存の柱や梁、二間続きの部屋の関係など、長屋が持つ空間構成を可能な限り残している。既存建具はつくり替えながらガラスを再利用し、新しく必要となる建具や仕上げについても、既存の空間と過度に対立しない素材や納まりを選択した。

一方で、単に古い状態を保存するのではなく、現在の暮らしに合わせて空間の読み替えも行っている。打ち合わせの場となる部屋では天井を撤去し、それまで隠れていた既存梁を現すことで、小さな長屋の中に垂直方向の広がりをつくった。2階でも既存床を残しながら天井を取り払い、屋根勾配を室内に取り込むことで、従来とは異なる空間のスケールを与えている。
畳、土壁調の壁、濃色の既存木部といった長屋本来の要素に対して、新しい木部や家具、照明を重ねることで、古いものと新しいものを明確に分離するのではなく、異なる時間が同じ空間の中に共存することを考えた。ダイニングにも畳を残しながら家具によって空間の性格を調整し、伝統的な和室として固定されない使い方をつくっている。

長い時間の中で、住む人が変わるたびに少しずつ手を加えられてきた長屋。その変化そのものを建物の価値として捉えれば、改修もまた、その長い時間の中の一つの層である。
過去の痕跡を消して完成された空間をつくるのではなく、これまでの暮らしを受け継ぎながら、次の住み手が新たな痕跡を加える余白を残す。
建築に蓄積された時間を途切れさせず、路地の暮らしとともに次の時代へつないでいくことを目指した。

所在地:京都市東山区
構造規:木造  地上2階建て
延床面積:45.00㎡
竣工:2021年11月
施工:森川工務店

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