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愛知・名古屋|崖地住宅・ローコスト住宅|桜本町の家

愛知県名古屋市の崖地住宅「桜本町の家」

 愛知県名古屋市南区、100㎡に満たない敷地に建つ木造住宅。
敷地の背後には約3mの擁壁が迫り、崖条例への対応が必要となる一方、限られた予算のなかで住宅としての豊かな空間をつくることが求められた。一般的には、既存擁壁の倒壊に備えて新たな待ち受け擁壁を築造する方法が考えられる。しかし、それだけのために大きな工事費を費やすのではなく、安全性を確保するために必要な構造そのものを、住宅の空間をつくる要素として利用できないかと考えた。

そこで建物を可能な限り既存擁壁から離して配置し、土砂の影響を受ける範囲については、建物の基礎と一体となった高さ約1mのRC造の高基礎によって対応した。この高基礎を、単なる防護のための構造物として隠すのではなく、室内へと連続させることで、この住宅独自の空間構成をつくり出している。

擁壁から生じた高基礎は、腰掛けとなり、畳の小上がりとなり、階段やダイニングへと高さを変えながら連続していく。
「擁壁 → 高基礎 → ソファ・畳スペース → 階段・ダイニング → キッチン」

敷地から受けた外的な条件が、波紋のように住宅内部へと伝わり、それぞれの居場所や家具、床の高さへと姿を変えていく構成とした。限られた床面積のなかに独立した用途ごとの部屋を並べるのではなく、座る、食べる、上がる、くつろぐといった人の動作を連続させることで、ひとつの空間のなかに性格の異なる複数の居場所をつくっている。

その結果、コンパクトな住宅でありながら、場所ごとに異なる高さや距離感、視線の変化が生まれ、実際の床面積以上の広がりを感じられる住空間となった。この住宅では、敷地の制約を取り除いてから建築を考えるのではなく、制約そのものを建築の成り立ちとして受け入れている。法規、構造、コストという一見ネガティブに捉えられる条件を、それぞれ別々に解決するのではなく、ひとつの建築的な操作によって重ね合わせること。敷地固有の条件を読み取り、それを構造から家具、人の振る舞いに至るまで連続させることで、この場所だからこそ生まれる住宅を目指した。 


所在地:愛知県名古屋市南区
構造規模:木造  地上2階建て
延床面積:70㎡
竣工:2020年8月
施工:ヤマシタ工務店
撮影:松尾勝司

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