京都・下鴨の注文住宅設計|下鴨の家 新築工事

House, Work

場所と建築の在り方について

 本計画では、単なる住宅の設計・建築にとどまらず、「その場所に建つ住宅が、どのような関係性を生み出し、どのような“場”として成立するのか」という根本的な問いを出発点としています。
建築とは本来、空間をつくる行為であると同時に、人と環境、人と人との関係性を紡ぎ出す「場所そのもの」を形成する行為です。しかし現代の住宅設計においては、機能性・効率性・空間性能といった指標が重視される一方で、そこに暮らす人々の関係性や、時間とともに変化する「場の柔らかさ」が見落とされがちです。
本計画では、その点を再考し、「住宅とは固定された完成物ではなく、時間とともに育ち、住まい手との対話によって意味を更新し続ける動的な場である」という考え方に基づいて設計を行っています。


京都・下鴨の地域性と日本建築の構成原理の継承

「下鴨の家 新築工事」は、京都・下鴨エリアという歴史的・文化的背景を持つ地域に計画された住宅です。
この土地が持つ風土や街並みとの関係性を踏まえ、日本建築における特徴的な「曖昧さ」や「可変性」を設計の基盤としています。

具体的には、以下のような要素を取り入れています。

・軒や庇による内外の中間領域の形成
・通り土間による風と視線の抜け
・濡れ縁やくれ縁による屋外との連続性
・小上がり空間による用途の可変性
・田の字型プランに代表される柔軟な空間構成

これらの要素を組み合わせることで、内と外を明確に分断するのではなく、ゆるやかに接続し、環境と呼応する住宅を目指しています。


時間とともに変化し続ける「場」としての住宅

本計画において重要視しているのは、「空間を完成させること」ではなく、「時間とともに変化し続ける余白を設計すること」です。
季節の移ろい、光や風の変化、そして住まい手の暮らし方の変化に応じて、住宅がその意味や役割を柔軟に変化させていく構成としています。
その結果、各空間は独立して固定されるのではなく、緩やかな連続性を持ちながら、使い方や時間軸に応じて意味が更新される住まいとなります。


住宅設計としての意図(場所・建築・暮らしの統合)

「下鴨の家 新築工事」では、京都・下鴨という場所性を起点に、日本建築の空間原理を現代的に再解釈しながら、住宅を単なる建築物ではなく「人と環境の関係性を育てる場」として設計しています。
内外の境界を曖昧にし、空間の用途や意味が固定されない構成とすることで、住まい手の暮らしに寄り添いながら、時間とともに成熟していく住宅を目指しました。
この住宅は、完成された「形」ではなく、暮らしの中で常に更新され続ける「関係性の器」として存在し続けることを意図しています。

所在地:京都市左京区   
構造規模:木造  地上2階建て
延床面積:150㎡     
竣工:2024年8月
構造:海野構造研究所      
施工:坂田工務店     
撮影:松尾勝司